こんにちは。
Content Marketing Podcast(CMP)の三友です。
HubSpotのオウンドメディアへの検索流入数が、ゼロクリックなどの影響で大きく減少したのでは、という報道(Search Engine Land)が昨年1月にありましたが、
その後どうなったのだろう、とふと気になったので色々と調べてみました。
すると、HubSpot自身がこの騒動についてかなり直接的に説明している記事が、今年7月に出ていました。
メディアのトラフィックの低下自体は事実であるものの、AI検索が活発になる以前から、トラフィック依存型のやり方を段階的に解消していた、といった説明です。
トラフィック依存型からの脱却。つまり検索での上位表示→流入→リード獲得→商談、という直線的にユーザーを移動させる従来型ファネルだけでは不十分、という考えです。
この変化は、彼らが25年9月に新しいマーケ手法として発表した「Loop Marketing」という考え方にも表れています。インバウンドマーケという創業以来の屋台骨だった戦略を刷新するあたり、彼らの本気度が伺えます。
正確には、見込み客を教育して関係を築くというインバウンドマーケの原則はそのままであるものの、見込み客が自ら訪問することを前提とした従来型ファネルは、もはや「破綻」(broken)していると指摘します。
ではどうするのか?という話に今回触れたいと思います。
そもそも検索流入数の激減は問題だったのか?
まず冒頭で触れた検索流入数の激減ですが、一見して致命的な問題のようにみえます。
Search Engine Landの記事が事実であれば、検索流入が4割も減ってしまったことになるのでかなりの痛手のように見えますが、私は事業へのインパクトは意外と限られていたのではないかと思います。
というのは、アクセス数を大きく減らしたページの多くは、情報提供型コンテンツで、かつHubSpotの本業であるCRM関連とは遠いトピックが中心とされているからです(著名人の名言集や退職願の書き方、カバーレター(送付状)の例文に関するブログなど)。
つまり、自社だからこその専門性がある発信というより、検索流入の獲得そのものを目的にした「SEO優先コンテンツ(SEO-first content)」にあたります。
さらにHubSpot自身も、もともと低品質のブログ記事の削除を進めるなどしており、アクセスの減少は「一部は意図的」(partly by design)であるとしています。
実際、公表されている売上高と顧客数は、引き続き右肩上がりを維持しているようです(検索流入減との因果までは分かりませんが)。
▼参照元
https://www.prnewswire.com/news/hubspot%2C-inc./?page=1&pagesize=25
https://ir.hubspot.com/financials/quarterly-results
https://ir.hubspot.com/news-releases/news-release-details/hubspot-reports-q2-2026-results
https://www.macrotrends.net/stocks/charts/HUBS/hubspot/revenue
「情報」の量産から、「影響力」の蓄積へ
とはいえ、従来型の直線的なファネル、つまり検索結果での露出→流入→リード獲得といったやり方がすでに機能しなくなっていることは誰の目にも明らかですし、HubSpotもここ数年で試行錯誤を続けてきたとしています。
この数年がかりで進めてきた変化について、先月(7月)に公開された記事にて、彼らは「情報」(Information)から「影響力」(Influence)へのシフトと表現しています。
「広さ」(breadth)よりも「深さ」(depth)という言い方もしていますが、つまり一般情報を量産する従来のやり方から、自社の製品とのつながりが一定あるテーマを深く掘っていく方式への変更です。
もちろん、単に制作テーマを絞りました、という話ではありません。
問題は、外部プラットフォームのアルゴリズムに最適化する→流入→獲得、という分かりやすい動線が途切れてしまった今、どうするのか?という問いです。
彼らの記事を見る限り、ポイントは、大きく2つあると思います。
一つは、ターゲットに「常に接触し続ける存在」(ever-present)になるという点。従来の中心だったオウンドメディアだけでなく、YouTubeやポッドキャスト、ソーシャルメディアといった複数チャネルに投資したほか、
ターゲットとの接触密度も高めています。具体的には、良質なリードを数多く持つ起業家向けニュースメディア「The Hustle」の買収が一つ。ビジネスニュースを毎日メールで配信する同メディアですが、HubSpotの顧客層とも親和性の高いリストを150万件超(買収当時)も保有しています。
ただし、もし仮にこうした複数チャネルでの接触の重要性=自社サイトへのアクセス増、という風に解釈してしまうと、結局は従来の直線モデルの踏襲になってしまいます。
HubSpotが重視するのは、「人々が最終的に製品(CRMやMAなど)を必要としたときに、最初に自分たちのところへ来てもらうこと」。いざ製品の必要性を感じた際に、HubSpotというブランドを想起してもらう、という状態です。
もはや外部プラットフォームのアルゴリズムをハックして流入を獲得することが難しいならば、人の記憶や想起に訴える。
もちろん、誰が作ってもそう変わらない量産型の情報コンテンツでは、ブランドを覚えてもらうことは難しい。
だから、彼らが目指すのは「自社が真の専門知識を持つトピックにおいて高品質なコンテンツを開発する」という方向性です。
特定の事業をしているからこその知見やインサイトを交えながら、自分の言葉で語る。個人的には、企業が情報発信するならこれ以外に何ができるのか、と思えるくらいシンプルで当たり前なことではありますが、まさにこうした原点回帰が他の企業にとっても重要になってくるのではないかと思います。
私の理解では、HubSpotが提唱するこうした考え方は、Content Marketing Institute(CMI)が提唱する「オーディエンス」と通じる部分も多く、概念的にはそこまで目新しいものではないと感じます。
むしろHubSpotらしさが表れているのは、こうした概念を「AI時代に必要なノウハウ」として「Loop Marketing」という手法に具体的にまとめる、かつ「それを実行するにはHubSpotのこの機能とこの機能が重要になる」という風に、一気通貫で整理している点です。
ソートリーダーシップコンテンツがそのまま製品の必要性を説明するプロモーションになり、さらに製品自体が提唱した手法の実行基盤になる。この一貫性は巧みです。
さらに9月にはLoop Marketingの書籍まで出版しています。
Loop: Outlearn. Outmarket. Outgrow
自社の「独自性」や「専門性」をどう探すか?
ただし、「独自データや独自の洞察を持て」「高度に差別化された専門コンテンツが重要」という方向は分かっても、企業はそれをどう探して、どのようにコンテンツに落とし込めばよいのでしょうか。
単に独自調査をしてレポートにまとめる、といった小手先では足りないことは明らかです。情報が独自であることと、自社の専門性の裏打ちがあることは別だからです。後者が欠けてしまうと、購買につながるストーリーを作れません。
やはり自社の事業をやっているからこその知見や専門性をコンテンツに昇華することが重要なはずです。
しかし、自社の専門性や知見というのは、一般的に明示的に整理されていなかったり、暗黙知となって埋もれている、各部門に散逸していることも多いです。
さらに一般的なコンテンツマーケ部門は、顧客との接触がある現場との距離が特に遠い存在でもあるので、一筋縄ではいかなそうです。
次回はLoop Marketingの枠組みも参照しながら、AI時代に必要な独自性について考えてみたいと思います。



